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02月

“型の違い”を尊重するということ ー 押し込み型は避けたい理由 ー

“型”の違いを尊重するということ ー 押し込み型は避けたい理由 ー


パラグアイアルパのレッスンでは、

「先生の手を見て、そのまま真似る」という学び方が基本になります。

この方法で、すっと感覚を掴める方もいれば、

なかなかうまくいかない方もいます。


私は日本で教える中で、

“見て真似る”だけでは上達しにくいタイプの方もいる

ということを、何度も感じてきました。


そこで、感覚だけに頼るのではなく、

何が起きているのかをできるだけ言語化して伝えられないか。

そう考えながら、これまで多くの方の手の動きや音の出方を観察してきました。

その中で、アルパの弾き方にはいくつかの“型”のようなものがあり、

人によって自然に選ばれている型が違うのではないか、

と感じるようになりました。



<型の違いは、優劣ではありません>

私の感覚では、アルパの弾き方には大きく分けて、

• 弦の反動に乗って音を作る「反動型」

• 形の再現性を大切にして安定した音を作る「固定型」

• 横方向に流すことで音をつなぐ「流し型」


といったタイプがあるように思います。

これらは、どれが正解・不正解という話ではなく、

音楽の作り方の“思想の違いのようなものです。

なお、これらの分類は、アルパの奏法として

一般に体系化されているものではなく、

私自身が多くの演奏やレッスンの現場を見ながら、

便宜的に分けている整理です。



<ただし、「押し込み型」だけは避けたい>

一方で、私はどうしても避けたい弾き方があります。

それが、弦を押し込むように弾く“押し込み型”です。

押し込み型は、一瞬は音量が大きく出るため、

「よく鳴っている」ように感じられることがあります。

しかし実際には、

• 音が伸びず、硬く痛い印象になりやすい

• 弦の反動が殺され、音が前に飛びにくい

• 指や関節に負担がかかり、故障につながりやすい

といった問題を抱えています。

音楽的にも、身体的にも、長く続けるには

リスクが大きい弾き方だと感じています。

そのため私は、型の違いは尊重しつつも、

押し込み型だけは、できるだけ避ける方向へ導きたい

と考えています。



<型は「育つもの」でもある>

反動型・固定型・流し型は、その人の身体の癖、音の好み、

これまで出会ってきた先生や楽器によって、

自然に形作られていくものです。

無理に別の型へ変える必要はありません

ただし、

• 音が苦しそう

• 速くなると詰まる

• 指や手首に違和感や痛みが出る

• 音が響かない


といったサインがある場合、

今の型がその人の身体や楽器に合っていない可能性もあります。

そのときに、別の“型の考え方”をそっと提示できることが、

指導者としての役割なのではないかと感じています。

<おわりに>

アルパの弾き方には、ひとつの正解があるわけではありません。

けれど同時に、

身体を壊したり、音の可能性を狭めてしまう弾き方は、できるだけ避けたい。

型の違いを尊重しながら、音楽としても、身体としても、

無理のない道を一緒に探していけたらと思っています。

パラグアイでアルパを学ぶ意味

パラグアイに行くと、

「何曲新しい曲を覚えられるか」

「どれくらいレパートリーを増やせるか」

ということを目標にする人も少なくありません。

けれど、正直に言うと、

“曲を覚える”だけなら、いまの時代は日本にいても十分にできます。

YouTubeにはたくさんの演奏動画があり、

耳コピもできますし、手元の動きも目で追えます。

日本で先生に習えば、ドレミを言ってもらえますし、

弾き方のコツも言葉で丁寧に教えてもらえます。

効率だけを考えるなら、その方が早い場面も多いでしょう。

実際、パラグアイの先生たちは

「見て、聞いて、覚える」というスタイルが基本です。

音名や弾き方を細かく言ってくれることはほとんどなく、最初は戸惑う人も多いと思います。

それでも、私がパラグアイへ行く意味があると思っているのは、

曲を覚えるためではありません。

生の演奏を“浴びる”こと

現地の奏者の演奏を、

動画ではなく「生」で浴びる。

その体験は、まったく別物です。

音の大きさや柔らかさ、

流れや響きの方向、

身体の使い方、

呼吸のリズム、

間の取り方。

そういったものは、

映像や言葉では、どうしても一部しか伝わりません。

けれど、同じ空間で見て聴いていると、

ある瞬間ふっと、

身体の奥が目を覚ますような感覚が起きることがあります。

「あ、こういう響きなんだ」

「こういう流れなんだ」

と、頭で理解する前に、

身体のほうが先に反応してしまう。

私は、これこそが

パラグアイで学ぶ一番の意味だと思っています。

技術ではなく、“感覚の種”を持ち帰る。

現地で得られるのは、

完成した技術や、すぐに再現できる答えではありません。

けれど代わりに、

身体の中に残る“感覚の種”を持ち帰ることができます。

その種は、日本に戻ってからの練習の中で、

ある日ふと芽を出します🌱

動画を見ているだけでは気づかなかったこと、

今まで何度も注意されてきたのに

腑に落ちなかったことが、

突然つながる瞬間が来る。

それは、「曲を何曲覚えたか」では測れない学びです。

何曲覚えたか、ではなく

パラグアイでの学びは、

“成果”がすぐに数字で見えるものではありません。

けれど、

演奏の質や、音の感じ方、

身体の使い方の根っこに、

静かに影響し続けます。

だから私は、

「何曲覚えられたか」ではなく、

「本場の音を、生で浴びて

自分の身体が、何に反応したか」

そこを大切にしてほしいと思っています。

良い楽器は良い先生


前回のコラムでは「楽器のテンションが変わることで、

フォームや指を壊してしまうことがある」

という少し警鐘的なお話を書きました。

今回は逆に、

良い楽器は、良い先生になってくれる

というお話です。

今回、パラグアイで新しいアルパに触れたとき、

私は「テンションが高い」とは感じませんでした。

ただ、「反応がいいな」と感じただけでした。

ところが、日本に戻って別の楽器に持ち替えた瞬間、

「あれ?」と違和感を覚えました。

そこで初めて、

自分が弦の反動を感じながら弾いていたことに気づいたのです。

テンションがやや高めの楽器は、

弦の反動がはっきり返ってきます。

そのため、フォームが合っていないとすぐに弾きにくくなり、

逆に、弦の動きに逆らわずに弾けていると、自然と指が運ばれていきます。

私はそのとき、「アルパは押す楽器ではなく、

返ってきた反動に乗る楽器なのだな」と感じました。

反動に逆らわず、返りに“乗る”ように弾けているときは、

関節は柔らかく動いているのに、不思議とフラフラせず、

安定した感触になります。

良い楽器は、この「逆らっているか、乗れているか」を

とても正直に教えてくれます。

うまく弾けているときは、弦の方から

「こっちだよ」と道を示してくれるように感じることもあります。

楽器は、ただ音を出すための道具ではなく、

自分の弾き方を映してくれる“鏡”であり、

ときにはフォームの間違いを教えてくれる“先生”にもなります。

だからこそ、

楽器選びはとても大切ですし、

良い楽器と出会えたときは、

ぜひその反応に耳を傾けてみてください。

楽器は、

言葉では何も教えてくれませんが、弦の反動や弾き心地を通して、

いつもたくさんのヒントをくれています。

楽器を替えて指を壊す人の共通点

パラグアイから戻り、新しいアルパに持ち替えました。今回の楽器は、同じエル・レイのアルパでも、テンションが少し高めの個体でした。(すべてのエル・レイがテンションが高い、という意味ではありません)


 テンションの高い楽器に触れたとき、ふと、過去に「楽器を替えた後に指を壊してしまった人」たちのことを思い出しました。
あのときは、「たまたま相性が悪かったのかな」「無理をしてしまったのかな」くらいにしか考えていなかったのですが、今回、自分がテンションの高い楽器と向き合ってみて、そこにははっきりとした“構造的な落とし穴”があるのだと感じました。
楽器が変わっただけなのに、それまで問題なく弾けていたフォームが通用しなくなる。そして、その違和感を“力”で埋めようとしたとき、音より先に、指や関節のほうが悲鳴をあげてしまう。
これは特定の工房や楽器の問題ではなく、楽器の個体差と、弾き手のフォームとの組み合わせの問題だと思います。楽器を替える予定のある方や、楽器を替えた後に調子が悪くなってしまった方、これからテンションの高い楽器に触れる方にとって、少しでも参考になればと思い、自分の実感をもとに書き残してみることにしました。


 ① 前の楽器と同じ「出力」を出そうとしてしまう

 新しい楽器に持ち替えたとき、多くの方が最初に感じるのは「思ったより鳴らない」という違和感かもしれません。
そのとき、無意識のうちに起こりやすいのが、前の楽器と同じ感覚で音量を出そうとしてしまうことです。「あれ?鳴りにくい?」と感じた瞬間、指は自然と力を足しにいってしまいます。
しかし、テンションの高い楽器は、出力を上げることで鳴らす楽器ではありません。むしろ、方向が合ったときに素直に鳴ってくれる楽器です。
音量で何とかしようとすると、音よりも先に、指・関節・腱に負担がかかっていきます。

 ② 「鳴らす=押す」になってしまう

 音が思うように出ないとき、多くの方は「もっと鳴らそう」と考えます。その結果、無意識のうちに指を深く入れたり、強く押し込んだりして、弦に“噛ませる”ような動きになってしまうことがあります。
これは、「鳴らす=押す」という感覚が身体に染みついている状態です。
ですが、テンションの高い楽器は、押せば鳴る構造にはなっていません。むしろ、押した瞬間に流れが止まり、反発を指で受け止めてしまいます。
この状態が続くと、腱鞘炎、爪のトラブル、関節の痛み、指の痺れなど、身体の方が先に悲鳴をあげてしまうことがあります。


 ③ テンションを「筋トレ」だと勘違いしてしまう

 「テンションの高い楽器で練習すれば、指が強くなる」そう感じる方も少なくありません。
たしかに、テンションの高い楽器で練習することで育つものはあります。ただし、それは筋力ではなく、方向の精度です。
力でねじ伏せるような弾き方を続けてしまうと、指は強くなるどころか、本来の“使い方”が少しずつ崩れていってしまいます。
テンションの高い楽器は、指を鍛えるための道具ではなく、方向のズレを教えてくれる鏡のような存在なのだと思います。


🌼今回は、テンションの高い楽器に持ち替えたときに起こりやすい「指を痛めてしまう落とし穴」について書きました。
ただ、テンションの高い楽器は、決して“怖い楽器”でも“危険な楽器”でもありません。むしろ、使い方が合えば、自分のフォームのズレや方向を、とても正直に教えてくれる存在だと感じています。


🌼次回は、「良い楽器は良い先生」というテーマで、新しい楽器とどう向き合えばよいのか、実際に自分が感じたことをもとに、“解決策”のヒントをいくつか書いてみようと思います。